会社を継いでくれる人(後継者)がいない」という悩みを本当によく聞きます。昔は、「なんでだろう?」と私も思っておりましたが、今は「たしかに、そうだろうな」と思うようになりました。多くの会社が赤字ですが、なかなか赤字の会社を継いでくれる他人はいません。それなら、ご家族が継ぐしかありません。しかし、大変な思いをしてきた親の会社を継ぎたいと思う人は少ないでしょう。当然、黒字の会社であっても継げばリスクが伴います。時代のちょっとした変化で会社は危機に陥ります。経営者に全く責任のないことで大変な目にあった方を数えきれないほど見てまいりました。そうなると、全てを失うことになるかもしれません。自分が創った会社は自分がやりたいことを事業として始めたはずです。次世代に会社を継ぐまで存続している会社です。経営者には強い思いがあるはずです。しかし、人が創った会社は自分がやりたいことと一緒とは限りません。そうかと言って、組織を変革して、自分の思い通りの会社にしようと思っても大変です。現状を変えるのは不安が伴いますので組織の変革は猛烈な反発にあいます。先代の社長との対立も起きることもあります。株式を手放さずオーナーは先代の社長のままで、会長職や相談役として残っている場合もあるでしょう。そうすると、自分の思い通りにはなかなかなりません。それでも、無理に変革をしようとすると、会社を支えてくれていた社員が会社を辞めていきます。そうでなくても、2代目社長が会社を継ぐと同時に、会社の実務を取り仕切ってきた役員が会社を去っていくこともあります。先代の社長との対立、会社を支えてきた役員の退社、そして、社員との関係と、社内をまとめるだけでも大変です。しかし、これは、後継者の方が悪いわけではありません。よく起きる普通のことです。「自分の思い通りに全てを行える創業社長よりも、手足を縛られた後継者の方が大変なのではないか?」と思うときがあります。私の仕事は、就業規則の作成です。賃金、残業代、退職金等の労働条件を決め、社員が守るべきルールを作成します。つまり、会社と社員の皆さんとの関係を規定する書類を作成する仕事になります。その就業規則を作成する過程で、社内の人間関係のご相談を経営者から受けます。特に、2代目・3代目の社長から先代の社長との関係、社員との関係のご相談を多く受けてきました。恥ずかしながら、開業当初は、相談されても何もできませんでしたが、何か自分にもできないかと2代目の社長と一緒に試行錯誤してきました。お客様だけではなく友人の2代目社長や後継者候補の方々と様々なことを試みたこともあります。2代目社長のお話を伺い、気が付いたら終電がなくなってしまったことが何度もあります。徐々に、2代目社長のお役に立てるようになり、2011年を契機にして、一気に変わりました。本書の目的は、社内の人間関係でがんじがらめになっている2代目社長が会社を変えようとする際に、スムーズに進めるヒントをご提供することです。先代の社長と意見の対立が起きても、自分のやっていきたいことを後押ししてくれる協力者になってもらえる。社員の皆さんには厳しいことを言っても賛同してもらえる関係を構築する。就業規則の変更をキッカケして、そんな会社になっていただくための本です。反発が起きるということは会社が一致団結するキッカケになる良い機会です。むしろ、就業規則の変更を通じて、積極的にそのような場を設けてみて頂きたいと思います。【読者限定プレゼント】この本を手に取ってくださった2代目社長のあなたへ。感謝の気持ちを込めて、プレゼントを用意しました。『社員とのトラブルが劇的に減る6つの視点』就業規則には『特に、社員とトラブルが生じやすい7箇所』があります。その7か所を『6つの視点』で見直せば、トラブルは劇的に減ります。『6つの視点』は市販の書籍等では学べない内容になっています。ぜひ、6つの視点を持って就業規則を見直してください。【目次】まえがき第1章 2代目社長からの就業規則の依頼社内の人間関係の相談は社会保険労務士の仕事なの? 先代の社長との衝突、社員からの反発合意形成にいたる技術との出会い第2章 就業規則そもそも就業規則って何?就業規則は社員を守るためのもの?就業規則は社員の皆さんとの契約書です会社を守るためには就業規則が必要です労働条件を就業規則で引き下げるのは容易ではない就業規則を不利益に変更するには同意が絶対に必要?第3章 合意形成に至るためのダイアログきちんと人の話を聴くのは難しい話し合いでは合意形成に至らない参加者全員が話を聴く姿勢になるためには?合意形成に至るダイアログにはファシリテーターが必要?第4章 先代の社長との衝突先代の社長と社員との話し合いは分けて考えましょう先代の社長と社員の賃金で揉めた話先代の社長と合意形成に至るのは社員とよりも容易です譲れることと譲れないことは誰にでもあります第5章 社員を社長の味方にする就業規則は会社が作成・変更するものです規則のイメージを変えることから始めましょう愛社心を育てる就業規則説明会社員に会社の規則を考えてもらう機会を設けましょう社員の皆さんに規則について考えてもらう本当の意味あとがき■■著者プロフィール■■二代目社長の課題解決社労士/特定社会保険労務士クライアント企業全体の40%以上を二代目社長・三代目社長の会社が占める、二代目社長の課題解決社労士である。就業規則の専門家でありながらも、二代目・三代目社長からは書類作成・法律の相談にとどまることなく、社内の対立構造(人間関係)について相談を受ける。実際、その割合は7割を超える。コミュニケーションの場づくりを青山学院大学社会情報学部ワークショップデザイナー育成プログラムで学ぶ。社会保険労務士の業務は多岐にわたるが、この点が大きな特徴となっている。